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?. 特別委員会のコメント
1. 規定の趣旨
EDI協定に関連して発生した紛争の解決策は、基本的には、一般の商事取引契約違反から生じた紛争を第三者によって解決する場合と同じであると考えてよい。
損害を被った当事者からその相手方ににクレームが提起された場合、係争当事者が互い に譲歩して和解(amicable settlement)することが最も望ましいが、これが困難となり紛争に発展したときには、その解決を第三者に委ねる方法がとられる。この方法として、一般に考えられるのは、調停(conciliation)、仲裁(arbitration)および訴訟(litigation; lawsuit)の三つである。いずれの方法がどの位の割合で利用されているかは明らかでない。調停は和解に近いので、通常、仲裁の前に調停を試みるようであるが、当事者の関係はすでに紛争という段階にあるので、調停による解決を期待することは難しい。国際的な商事紛争の場合は、手続の簡易、迅速、低廉等から、一般的に、訴訟よりも仲裁の方がこの種の紛争の解決に適しているので、実際に効果的な解決方法として最も多く利用されているのは仲裁である。
モデル交換協定書では、当事者はさまざまな紛争解決方法を規定することができると述べているにも拘わらず、紛争の解決方法として、仲裁[第1案]と裁判[第2案]についてモデル条項を掲げている。そして、注釈書では、「電子通信の使用を希望する者は、科学技術のもたらしたスピードと効率性に魅きつけられたのであるから、紛争解決にも同様の方法、すなわち仲裁を採用することを望むであろう。」と説明している。
国際商事紛争の解決に仲裁がもっとも多く利用されるのは、仲裁判断が裁判所の確定判決と同一の効力を有し、また必要な場合には、強制執行を求めることができるだけでなく、一般に、訴訟に比べて、費用が低廉であり、簡易かつ迅速な解決手段であること等が挙げられる。特に、国際商取引においては、当事者がそれぞれ異なる国に営業所を有し、国境を越えて物品が移動するので、これから生じた紛争を訴訟によって解決することは、国内における商事紛争の場合以上に時間と費用を要し、さらに、折角の勝訴判決も外国で執行することは殆ど不可能である。このような理由から、国際商取引では、紛争を平和的に解決し、言語、距離、文化、裁判手続等の相違による障害を克服する実際的な方法として、仲裁制度が広く一般に利用されている。以下、第1案「仲裁条項」および第2案「裁判条項」について、若干の説明をする。

 

 

 

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